標的32 架け橋 ページ37
バレないうちに早くアジトを出なくては。その前に必要そうな物を持っていきましょう。
その辺に落ちていた拳銃を拾い上げます。僕の幻術さえあれば、大抵の窮地を切り抜けられると思いますが、念の為持っていきましょう。
あとは、お金でしょうか。これから生きるためには、逃げ続けなければいけませんし。警察よりも、マフィアからの報復が怖いところです。
死体の懐を漁りながら、少しずつ金を集めていると、どこかでガタッと音がなりました。
ネズミでもいたんでしょうか?音の鳴った方に行ってみると、子供が2人机の下で震えながら隠れていました。…まだ子供がいたのですか。
「こ、殺さないで」
「なんでも…します」
金髪の少年と、黒髪の日系らしい少年でした。2人とも目に涙をいっぱいにためながら、震えています。
今僕がすることは、この2人をここで殺すこと…。きっとそれが正解だとは思いますが、虐殺した記憶のない今の僕には、まだ人を殺す勇気が持てませんでした。
「……僕についてきますか?」
これは殺さない以外にこの子達の口止めをする方法として唯一だったのですが、この出会いが、僕達とどこかにいるAをつなぐひとつの架け橋になっているとはこの時はまだ知らなかったのでした。
____
「あなた達の名前は?」
「名前…?」
「僕達、生まれた時から名前がないです…」
名前が無い……孤児とかでしょうかね。それをエレナに拾われて実験に使われた…というところでしょうか。
「じゃあ僕が名前をつけてもいいですか?」
「え!いいんれすか?!」
「それは…嬉しいです」
目をキラキラさせてこちらを見る金色の髪の少年と、
長く伸びた前髪で目が若干隠れ、表情が読みにくいが嬉しそうにする黒髪の少年。
なんだか、弟のようでかわいいですね。
「じゃあ……犬と千種」
「ケン?」
「チク、サ?日本名ですか」
完全にインスピレーションでつけましたが、千種の方は少しは学があるようですね。
これは案外しっかり仕込めば、僕のいい盾…になってくれるでしょうか。
「おや、嫌でしたか?」
「っ嬉しいびょん!」
「いい名前です…」
2人とも喜んでいます。ああ、よかったです。
すると千種が、
「あの、貴方の名前は?」
「僕は」
ルカ、と答えそうになりましたが、もうルカじゃありませんね。
「……骸、六道骸です」
僕は六道を巡った、人間じゃない者になってしまったのですから。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます!とても励みになります…! (2018年4月10日 7時) (レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです!自分のペースで更新頑張ってください! (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2013年8月30日 0時