抜け殻 ページ28
辺りは暗くなり、頼りない外灯が公園内を照らしている。
人気のないこの場所で私はジョングク君に肩を掴まれているからか、彼の気迫に圧倒されたからか、身体を動かすことさえできなかった。
『ねぇ、あなたの言ってる約束って何?』
そう問いかけると、彼は顔を歪ませて目を逸らした。
「覚えていないならそれでも構いません。ですが、僕は交換条件でミサンガを貰ったので勝負してください」
『だから私は承諾してない……!それとそのミサンガは返して』
「何故ですか?」
そう言って眉間にシワを寄せたジョングク君。
何を言ってるんだろうって顔してるけど。
『そのミサンガはね、私の親友があなたのことを想って一生懸命作ったものなの。……だからそんなふうに受け取って欲しくない』
「………」
何を思ったのか彼は私の顎を救い上げた。
その目は、まさに冷徹そのものであった。
無意識に身体が小さく震える。
「……バドミントンをやっていないあんたは……ただの抜け殻ですね」
そう冷たく吐き捨てると私の顎から指を離した。
「……僕は果たし状を投げた。それを使って取り返したらどうですか?」
『だから私はもう───……
「ま、考えておいてください。卒業するまでまだ時間はあるので」
そう言うと、彼は私の前から立ち去っていった。
体感的には、3時間ぐらいそこにいたような気分だった。
緊張から解放されたからか、膝から地面に崩れ落ちてしまった。
"ただの抜け殻ですね"
彼のこの言葉が頭の中で何度も反響する。
『ははっ……何気に1番傷ついた、かな……』
まるで自分の存在まで否定されたようだった。
アジア王者じゃない私は……生きていることさえ許されないんだろうか。
手に落ちてきた水滴に思わず頭を上げると、雨がポツポツと降ってきた。
どうやら天気にも見放されたようだ。
もう立ち上がる気力もなかった。
私に気を使うことなく雨は激しさを増していった。
89人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sr - 続きが楽しみです。 (2020年9月6日 11時) (レス) id: 53a26bd6a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 面白いデス (2020年8月19日 18時) (レス) id: d305fb51e1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - 出してください (2020年8月18日 0時) (レス) id: d305fb51e1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:めめっち | 作成日時:2020年8月9日 23時