太陽だって冷たく笑う ページ9
・
YG「2曲ぐらい仮に作ってきたんだけどさ、聞いてくれる？」
『もう！？』
YG「俺、才能はあるから」
ユンギさんに貰った歌詞カードを夢中で見つめていれば「無視すんな」って言われたけど、無視じゃない。
だって、すごいもん。
私にとっては、私だけのために作られた曲なんてすっごくすっごく久しぶりだったから。
というか、私だけの歌ってあったかな。
候補曲の中からコンセプトに合う曲をそれぞれの歌手、グループに選んで、だから、私だけに作られた曲って、もしかしたら初めてかもしれない。
1曲目はバラードで、失恋ソングだった。
2曲目はディスコサウンドっぽいレトロポップな感じの曲だった。
『よくこんなバラバラの系統の曲作れますね』
YG「そりゃ、作れなきゃいる意味ねぇからな」
YG「会社にいたころは、作りたい曲じゃなくて作れって言われた曲を作ってたから」
YG「ほんとは俺は重低音響くような曲が好きだけど、んなこと言ってる暇なんてねぇし、頼まれた曲つくんねぇと、俺が死ぬからな」
ユンギさんの目はどこか切なそうだった。
でも、何かを諦めた目じゃなくて、青い海に沈む骸骨みたいに、火山の中にくすぶる火種のように、ただ静かに、澱みなく、揺れていた。
『なんで、殴ったんですか？』
YG「？誰を？」
『ほら、クビになった原因が人殴ったからだって…』
YG「ああ、あれね」
ユンギさんは、根元が少しだけ黒くなった、パサついたブリーチ毛をわしゃわしゃとかき回して、ふてぶてしい猫みたいに拗ねたように言った。
YG「俺の、大事な歌が否定されたから」
YG「俺にとっては、歌ってただの商売道具じゃねぇんだよ」
YG「いっこいっこ、ちゃんとした慈しみもって作ってきたもんだから、馬鹿にされて、ちょっとカッとなった」
こんな話は終わりな、ってユンギさんは、この前酒を煽ったみたいに、まあ今日はメロンソーダだけど、メロンソーダを勢いよく飲んでちょっと気まずそうに私から目を逸らした。
逸らしてくれてよかった。
多分、今の話を聞いて気まずかったのは、私の方だったから。
だって、私にとって、歌って、ただの商売道具だし。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1012人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
哺乳瓶(プロフ) - 最高の2024年が始まってしまった…更新してくださりありがとうございます (1月1日 1時) (
レス) @page21 id: 0a8c73e852 (このIDを非表示/違反報告)
ss17(プロフ) - え、来ちゃった？！！！かわいい！すき！！！ (12月30日 11時) (レス) @page19 id: 201cd60e21 (このIDを非表示/違反報告)
ハナボクロ(プロフ) - え、もう、え、好き（語彙力） (12月29日 1時) (レス) @page19 id: d58a271092 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：文鳥番長
| 作成日時：2023年10月20日 23時
