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YG「バカじゃね。おまえ」
ユンギさんは伸び切った袖で手を覆って、またその手で顔を隠して、俯いて、糸が切れたみたいにしゃがみ込んだ。
YG「Aのばか」
ユンギさんは、泣いてるわけでもなさそうだし、怒ってるわけでも、喜んでいるわけでなさそうだ。
ただ、静かに、赴くがままに、自分の感情の波を、余韻を、素直を受け止めている。
YG「怒られるだろ、俺たち」
YG「もうこのフェス出禁かもよ」
『だから私はもう歌わないんで』
YG「…………まじ?」
『大マジです。さすがにこんな嘘はつきません』
YG「まじかぁ」
ユンギさんは俯いていた顔をあげて、でもまだ手で顔を隠したまま、細い指先の間からちょっと鋭い、でも今は少し震えて緩んでいる目をのぞかせた。
YG「困るんだけど、俺」
どーしよ、って手のひら越しの目が細く三日月型に歪む。
笑っているのか、悲しんでいるのか。
この際どっちでもいい。
突然思い立って、ユンギさんの手首を掴んでガバッと手のひらを顔から離させた。
びっくりした顔のユンギさんとばっちり目が合う。
『私は、また売れないかもって、今更かよっていう不安を背負ってユンギさんの曲歌ったんです。直談判したんです』
『ユンギさんも、そうして』
『命かけて、今、歌って』
ユンギさんは何も答えず、目も合わさず、ただ静かに私のマイクを掴んで、グシャリと私の頭を雑に撫でた。
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哺乳瓶(プロフ) - 最高の2024年が始まってしまった…更新してくださりありがとうございます (1月1日 1時) (レス) @page21 id: 0a8c73e852 (このIDを非表示/違反報告)
ss17(プロフ) - え、来ちゃった?!!!かわいい!すき!!! (12月30日 11時) (レス) @page19 id: 201cd60e21 (このIDを非表示/違反報告)
ハナボクロ(プロフ) - え、もう、え、好き(語彙力) (12月29日 1時) (レス) @page19 id: d58a271092 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文鳥番長 | 作成日時:2023年10月20日 23時