演練 ページ8
この本丸にとって、最も大変と言っても過言ではないのが「演練」だ。
他の本丸の男士たちと一戦交え、戦法の見直しを図ったり、他本丸との交流を通じて各審神者の連携を図ったりするのが主な目的だが、この本丸において、後者の目的は基本的に、壊滅的に果たせない。
「浅葱本丸の多摩です。本日はどうぞよろしくお願いします。」
「蜂鳥本丸の深湖です。」
常に無表情。
「和泉守、向こうの陣形は鶴翼陣のようだから、こっちは魚鱗陣ね。」
「おう！」
ただし、仕事の腕は素晴らしく、その判断力は随一のもの。
「先ほどの戦いは見事でした！深湖さんと言いましたか、あの、良ければ色々お話をお聞かせください。」
こういうのはだいたい口実で、本当は、容姿端麗、頭脳明晰な審神者を口説くため。
こんなものに引っかかるお人ではないのだが。
「お断りさせていただきます。」
「えっどうして！僕は貴方の仕事ぶりについてお伺いしたいことが山ほどあるというのに！」
多摩と名乗った男審神者は慌てた素振りでそう言った。
深湖の横では一番隊 隊長 和泉守が呆れ顔でその男を見ている。
そんなに取り繕ったって無駄と言わんばかりに。
「いいえ。お答えして参考になるようなことは何もありませんので。失礼致します。」
「待ってよ！」
きっぱりと言い捨ててくるりと後ろを向いた深湖に、多摩がかなり大きな声を出しながら伸ばした腕を、
和泉守がすかさず掴んだ。
「主に触るな。悪ぃがあんたは主の趣味じゃねえ。」
ギロリ、本当にそんな音がしたのではと思うほど、鋭い眼差しで多摩を睨みつけた。
「和泉守、みんな、帰るよ。‥‥失礼。」
見返りながら様子を見ていた審神者は一言そう言って、また前に向き直り、スタスタと歩き出した。
「助かったわ。和泉守。」
小さくそう言ったのを、和泉守は聞き逃さなかったし、他のみんなにも、きちんと聞こえていた。
各々が顔を見合わせて嬉しそうに笑うのだった。
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梅雨月〈つゆつき〉(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！頑張って更新します！！ (2020年4月12日 22時) (
レス) id: fb62829e36 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - コメント失礼します！めちゃくちゃ尊いです…！無理しない程度で更新頑張ってください！！！！ (2020年4月12日 20時) (レス) id: 6cdbc3727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅雨月〈つゆつき〉 | 作成日時：2020年4月9日 23時
