湖 ページ30
「祖母に、引き取られた後は、祖母の家でも学校でも、なるべく笑顔でいようって努めた。
そしたらね、自然と人が寄ってきた。
友達がたくさんできて笑わなきゃなんて思わなくてもよくなった。
不思議よね、友達や家族といると、自然と顔が緩むの。」
審神者は、表情こそあまり変わらないものの、照れたようにそう言った。
「分かるよ。気が抜けると、顔の力も抜けるよね。人の子の体の不思議だよ。」
歌仙は、審神者の中の人間味を目の当たりにして、少し嬉しくなった。
「もちろん、学生生活が終わって、社会人異なった後も、ニコニコして過ごしたの。
慣れないことも多くて大変だったけど、そのほうが得だって、知ってたから。
わたしね、大手の化粧品会社に就職してね。
入社一年目、出席した企画会議で溢した意見がたまたま通って、それが結構評判になったの。
そしたら、上司がね、突然自分の手柄だって言い張りだして。
でも、こんなことは、社会ではよくあることなんだって思い込んだら、それはもちろん辛かったけど、なんとか耐えられた。
なんとか耐えて、その上司にも、他の人にも、変わらずニコニコし続けたの。
だけど、誰かが善意で密告したのか 何故なのかはわからないけど社内にその企画が実は新入社員のわたしが発案したものだっていうのが再度認識されてね。上司の居場所がなくなった時にだった。
上司に、湖に誘われたの。」
歌仙は先のことが予想できてしまい、背筋が凍るような心地がした。
「今考えれば その上司はわたしのこと殺したいくらい憎んでるだろうって、簡単に分かったのにね。
のこのこ付いてっちゃったの。
実際、わたしはその日に殺されてしまった。
綺麗な。本当によく澄んだ湖の前で、心臓をひと突きだった。」
そうだろうなと思ってはいたが、実際耳にするとそれはあまりに残酷で、歌仙は息を詰まらせた。
「でも、今思えば、あの時湖に行って良かったのかもね。」
歌仙は驚いたし、初めは聞き間違いかと思ってむせた。
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梅雨月〈つゆつき〉(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！頑張って更新します！！ (2020年4月12日 22時) (
レス) id: fb62829e36 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - コメント失礼します！めちゃくちゃ尊いです…！無理しない程度で更新頑張ってください！！！！ (2020年4月12日 20時) (レス) id: 6cdbc3727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅雨月〈つゆつき〉 | 作成日時：2020年4月9日 23時
