両親 ページ29
審神者は、歌仙の問いに黙って頷いたあと、「少し長くなるけれど。」と前置きした。
「まだ幼い時にね、
父親から、虐待を受けていたの。」
そのたった一言で、歌仙の額に悪い汗が滲んだ。
「父は、少しでも気に入らないことがあったら、『愛想が無い』『可愛くない』と言ってわたしを殴ったり蹴ったりしたの。
‥‥幼いわたしは何度も謝った。何を謝ればいいのか、いつ許されるのか、全くわからないまま。」
自分の過去の話をしているはずの審神者の目は、まるで他人の話をするかのようにいやに落ち着いていた。
「幼いわたしは、いつしか勘違いするようになった。
ああ、お父さんは、わたしたちにご飯を食べさせるために、自分の子を殴ってしまうほどの重圧や苦行に耐えているんだ。って。だからこんなのは仕方ないことなんだって。」
「そんな‥‥」
悲しい顔をした歌仙を見て。審神者は安心させるように少し微笑んだ。
「もちろんそんな訳無いんだけどね。」
だけど、だけど、母は、そんなわたしを無視したの。
たとえ、自分が腹を痛めて産んだ子が痛めつけられていても関係なかった。
わたしをかばえば自分が標的になってしまうもの。
それに、母にとって、父の血を引くわたしなんて、ただの悪魔にしか見えなくなっていたの。」
審神者は、本当は思い出して話すだけでも辛いのをひた隠すように、小刻みに震える両手を何度も揉んだ。
数日前のあの時だって、あんなに取り乱したのだ。
いくら前世の、昔の記憶とはいえ 辛いのは当たり前だ。
「でも君のこの笑顔は、とても作り物には見えないんだけれど‥‥。」
歌仙は、痛むところに触れないように、恐る恐る、そして優しく訊いたのだった。
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梅雨月〈つゆつき〉(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！頑張って更新します！！ (2020年4月12日 22時) (
レス) id: fb62829e36 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - コメント失礼します！めちゃくちゃ尊いです…！無理しない程度で更新頑張ってください！！！！ (2020年4月12日 20時) (レス) id: 6cdbc3727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅雨月〈つゆつき〉 | 作成日時：2020年4月9日 23時
