話 ページ15
ガコンっ
ガッ
木刀と木刀がぶつかる音が、道場に響く。
「だ〜〜〜いっつもこうだ、決着がつかねえ！」
和泉守はもどかしそうにそう言いながらその場に尻をついて座った。
「腕をあげたな和泉守、さすが一番隊の隊長を長く務めるだけあるよ。」
つられて歌仙もその場に座った。
「之定も相当なもんだぜ。料理も洗濯もしていつこんなに鍛えてるんだ。」
「まあ、僕も刀だからね。主も‥‥」
『主もそのことを分かって、僕をちゃんと刀として、戦場に送ってくれているよ。』
そう言おうとして、歌仙の口は止まった。
「主も、なんだ？」
和泉守は歌仙の顔を覗き込みながら訊いた。
「ああ、いや、僕は‥‥なんて勝手なんだと思ってね‥‥。」
自分自身に呆れているといった表情だった。
こんな顔は、和泉守も見たことがない。
「勝手？之定がか？‥‥なんでそう思う。」
「主は、僕のことを解ってくれている。
洗濯や炊事も、もちろんするけれど、刀として戦わせてもくれる。
その上、僕らにはあまり近づいて欲しく無いだろうに、近侍という一番身近な役回りまで、僕に任せてくれているんだ。
それなのに僕は、もっと主と話したい、同じ机で食事したいと‥‥まるで駄々っ子じゃないか。
自分自身に嫌気が差すとはこのことだよ。
ああ‥‥笑ってくれ和泉守。」
自らに呆れて投げやり気味に言った。
「笑うかよ。
アンタよりずっと若い俺が言うのは筋違いかもしれんが、
アンタはよくやってる。
もう少し自分の気持ちを大事にしてやれよ。」
「本当に変な気分だ。」
不快にしてしまったかと和泉守は一瞬たじろいだが、当人の顔を見て安堵した。
話せばスッキリする、とは多分このこと。
歌仙の顔は先ほどよりは幾分か晴れやかだった。
‥‥快晴とは言い難いが。
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梅雨月〈つゆつき〉(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！頑張って更新します！！ (2020年4月12日 22時) (
レス) id: fb62829e36 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - コメント失礼します！めちゃくちゃ尊いです…！無理しない程度で更新頑張ってください！！！！ (2020年4月12日 20時) (レス) id: 6cdbc3727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅雨月〈つゆつき〉 | 作成日時：2020年4月9日 23時
