倒錯 ページ13
三日月の神威によって結界が破られると、審神者を心配して集まっていた男士達が一斉に障子に押しかけた。
「待て。」
空気を裂くような、ピシャリとした声に、皆その場で氷漬けにされたかのように固まった。
「歌仙が先だ。」
三日月がそう言うと、事情を知らないはずの者も皆、半歩下がった。
そうして三日月は、急かすような、促すような目線を歌仙に送った。
「主、大丈夫かい？入るよ。」
障子を開けて飛び込んできたのは、顔面蒼白で全身にひどい汗をかき、小さく蹲って震える審神者だった。
「大変だ、主、君、大丈夫じゃないね、ああ、どうしよう、誰か薬研を！」
薬研が駆けつけるまで、歌仙はひどい罪悪感に苛まれながら立ち尽くしていた。
手を握ったり、背中を摩ったりはできなかった。
拒まれるのを恐れて。
「どうしたんだ大将、ひどい汗だ。」
「っ、は、はあ、ごめ、なさ、‥‥ゆるして、っは、ヒュ、」
両手で口元を押さえ、何に対してか必死に謝る審神者。
おそらく、過去の記憶と倒錯して混乱しているのだろう。
無論このことは、男士たちのうちの誰も知らない。
「辛そうだな、ちと触るぜ、
‥‥気管や肺が悪いわけじゃなさそうだな。」
「ごめんなさい‥‥っはあ、はぁ、っ‥‥」
薬研が触れても、抵抗どころか反応すらせず、ただひたすら謝り続けていた。
「酷く取り乱してる、体を少し起こして様子を見るしかない。」
「そんな‥‥」
歌仙はとうとう潰れてしまいそうなほど心が痛んだ。
自分にできることは何も無いのだと思うと、虚しくて仕方なかった。
薬研の言うとおり、審神者の容体はしばらくすると落ち着いた。
ただ歌仙はやりきれない気持ちでいっぱいだった。
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梅雨月〈つゆつき〉(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！頑張って更新します！！ (2020年4月12日 22時) (
レス) id: fb62829e36 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - コメント失礼します！めちゃくちゃ尊いです…！無理しない程度で更新頑張ってください！！！！ (2020年4月12日 20時) (レス) id: 6cdbc3727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅雨月〈つゆつき〉 | 作成日時：2020年4月9日 23時
