事件 ページ11
ある黄昏時のことだった。
仕事を片付け、部屋の前に置いてもらっていた昼食を食べ終えた審神者が食器を戻しに厨に行った。
夕食の準備にはまだ早いし、いつも通りこの時間帯は厨に誰もいないと見込んで来たのだが、今日はいつもとは違っていた。
「あ、やあ、誰かと思ったよ。」
ぎこちなく、でも嬉しそうに、歌仙は微笑んだ。
「ご馳走様。」
審神者はそれだけいうと、そそくさと食器を洗い、拭きあげた。
「ねえ、主。」
それはそれは優しい声で、審神者は身構えた。
自分の態度について何か言われるのではないかと思ったからだ。
「なんでしょう‥‥。」
「君は、僕たちのこと、信用できない？」
ああ、そういう方向か、と審神者は思った。
「いいえ。信用はしてる。」
これは紛れもない本心だ。
「本当かい？」
審神者が皆に心を開かず長く距離をとっているのには、もっと別に理由があるのだ。
「ええ。」
「だったらどうして‥‥心を開いてくれないんだい？」
背を向けてはいたものの、審神者には、歌仙が悲しい顔をしているのが分かっていた。
そして歌仙にも、審神者が困っているのは分かっていた。
「‥‥ごめんね。」
「謝らないでよ、主。」
「でも、できないものは出来ないの。」
審神者が早足で厨を出ようとした時、
歌仙は衝動的に彼女の手首を掴んだ。
思わず力がこもってしまっていたようだ。
「っ痛い、」
「！！」
審神者が、とっさに結界を張ったのだろう。ばちんという音がして、手が離れた。
そして謝ろうとしたときには審神者はもうそこに居なかった。
「あ、主！」
急いで自らも廊下に出て、審神者を追いかけるが、様子がおかしい。
足取りがおぼつかず、フラフラ走っている。
「ちょっと主、大丈夫なの？」
「どうしたんですか主君！」
すれ違う刀が口々に声をかけても、構わず走っていく。
明らかに、異常なほど息が上がっている。
何振りか後をつけてきたが、無意識に張られていた結界のせいで誰も審神者を捕まえられず、
結局審神者は自室に飛び込んで一層分厚い結界を張ってしまった。
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梅雨月〈つゆつき〉(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます！応援とっても嬉しいです！頑張って更新します！！ (2020年4月12日 22時) (
レス) id: fb62829e36 (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - コメント失礼します！めちゃくちゃ尊いです…！無理しない程度で更新頑張ってください！！！！ (2020年4月12日 20時) (レス) id: 6cdbc3727f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅雨月〈つゆつき〉 | 作成日時：2020年4月9日 23時
