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ふわりひらりと漂う白い影

噂が合っても実際いると思わないじゃない?

ん?あれ?

それって…まっつんを信用してないって事?

…いや…そういう訳じゃないんだけど…

思わず考え込む僕に君の笑い声が耳を掠めた

「んふふ…よく見てみなよ」

「へっ?」

もう一度よく見てみると

それはボードに掛けてある白いタオル

風に揺れてひらひらしているから

そんな風に見えたみたいだ

「そういうのを『幽霊の正体見たり枯れ尾花』って言うの」

「幽霊?枯れ尾花?」

「怖がる気持ちが何でもない物をオバケに見せたって事」

にやけ顔の君に僕は睨み付ける

言いたい事は解るんだけどさ

そんなに馬鹿にしなくても良くない?

…そもそも…君の家出に付き合ってんのに…

八つ当たりする様に

タオルをマットに叩きつければ

君は呆れ顔で僕を諭す

「そんなんじゃオバケだって逃げちゃうって」

「ちょっとびっくりしただけ!次こそ見つけてやる!」

「まだ諦めてないの?そろそろ帰ろう」

「え〜やだよ。こうなったら何が何でもオバケ探してやるんだ!」

「遅くなっちゃうし…みんな心配するよ」

「大丈夫だって!少しぐらいへっちゃらさ!」

いつもはそんな事拘らないのに

何故か意地になってる僕

そんな僕を見てまた悲しそうな顔をする君

…折角の冒険なのに…喧嘩は嫌だなぁ…

空気が悪くなるのを覆そうと

戯けて僕がガッツポーズをした瞬間

窓の外を明かりが横切った

「えっ?何?火の玉?」

思わず大声を出した僕の口元を

君の白い手が素早く覆う

そのまましゃがんで蹲れば

明かりは足音と共に扉の前に留まった

どうやら警備員らしい

鍵の確認なのか

ガチャガチャと音を立てるドアノブ

誘い出す様に揺れる明かり

扉越しにブツブツぼやいてる声

恐怖で2人の距離が更に縮む

でも…僕…何だかおかしい

どうして胸の鼓動がこんなに煩いだろう

さっきびびった延長?

スリル満点な状況だから?

それとも…君がこんなに近いから?

口を塞ぐ君の掌は

何だか甘い香りがして少し冷たい

意識してそうを感じたら

鼓動がまたどんどん早くなる

やがて人影が去り明かりも遠退くと

君はようやく掌を外して離れる

それを…ちょっと悲しいと思うのは…

…やっぱりおかしいよね

「念の為、鍵掛けておいて良かったね」

ほっとした表情の君に

何と応えていいか解らなくて

瞳を逸らせばタイミングよく鳴る腹の虫

君は密かに笑って僕を引き上げた


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作者名:青山白樹
作成日時:2021年1月11日 10時

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