59. ページ9
独特な薬品の匂い。初夏を忘れさせるクーラーの冷房。
３つあるうちの一番奥のベッドに、仲間さんは寝かされていた。
「俺この後400メートルリレー出なあかんくて」
申し訳なさそうに照史くんは切り出した。
「終わったらすぐ戻るから、それまで淳太くん見ててもらっていい？」
照史くんの言葉を聞いた瞬間、4人の顔が脳裏に浮かんだ。でも、断れない。
「ありがとう。ほな頼むな」
照史くんが出ていくと、保健室はがらんと広くなったようだった。
私はベッド脇に置いてある椅子に座り、赤い中間さんの顔を見つめた。
微かに開いた唇から呼吸する音が聞こえる。
「…んっ…」
「大丈夫ですか？」
突然唸ったかと思うと、中間さんはゆっくりと体を起こした。
熱を帯びて潤んだ目は、私を捉える。しかし、焦点は合っていない。
なんか、いつもと違う人みたいだ。
「中間さん…？」
中間さんは私を見つめたまま、右手をこちらへ伸ばすした。熱を帯びた手が頬に触れる。
「えっ、え…？」
私はパニック寸前だ。中間さんが私の頬を撫でている。時折目が優しく笑う。
「なか…」
何も言わない中間さんは、そのまま私の後頭部に手を回し顔を近づけた。
あ、と思った瞬間、私は誰に習ったわけでもないのに目を瞑っていた。
中間さんが、私にキスをした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 141人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Hana(プロフ) - ふわさん» ふわさん、コメントありがとうございます。一年ぶりの更新でしたが、楽しんでくださる方がいて何よりです。最後まで書き切ろうと思うので、よろしくお願いします。 (2020年6月7日 18時) (
レス) id: 66a0eb112b (このIDを非表示/違反報告)
ふわ(プロフ) - はじめまして、ふわと申します。とても素敵な文章で一気に読んでしまいました。流星くんが切ないけど優しくて…これからの展開もとても楽しみです。素敵な時間をありがとうございました。 (2020年6月7日 11時) (レス) id: 1edcc49e12 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Hana | 作成日時：2020年6月5日 20時
