トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ8)

今日:10 hit、昨日:15 hit、合計:35,926 hit

58. ページ8

「え？」

２つの声が重なった。私の声と、細身の彼の声。

「泊まっていったらいいやん。ほんでそのまま住んじゃえば？」

ソファの彼の提案はとんでもないものだった。

「今思えば無茶苦茶な始まりやったで」

濵田さんは苦笑いする。私も流星もとんでもない言動を起こしてばかりで、濵田さんはさぞ苦労してきたことだろう。

「でも私、２人にめちゃくちゃ感謝してる」

私は伸ばしていた脚を丸め、体育座りの姿勢を取った。濵田さんが私の顔を見る。

「本当の家族みたいに大事にしてくれて。ずっと３人でいたいなって思うこともあった」

話しているうちに恥ずかしくなってきて、最後の方は声が小さくなってしまった。だけど本心なのだ。

あの時、太陽くんと別れて濵田さんと流星に出会わなければ、今の自分はいなかっただろう。

濵田さんは私を見つめたまま、こちらへそっと手を伸ばした。大きな手は私の頭を優しく撫でる。

「ほんまの家族みたいに思ってるよ」

「濵田さん」

「せやから俺らに遠慮せんと幸せになってな」

「えっ…」

濵田さんは頭から手を離すと、空になったお皿とコーヒーカップを手にした。

「好きな人できたんやろ？今度こそ幸せにしてもらいや」

「濵田さん…」

濵田さんは嬉しそうに、少し寂しそうに笑った。