トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ48)

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「喫茶店とか行く？」

「はい、たまにですけど」

目の前でシャツとスラックスを着た彼は、ピシッ！と音が鳴りそうなくらい背筋を伸ばしている。15分前、初対面したときには猫背だったのに、よほど緊張しているのか。

「好きなメニューとかある？」

「えっ」

「うちのメニューを食べてもらって、どんな味か知ってほしいから」

そう言うと、青年はフーと鼻から息を吐いた。何を言えば正解になるのか考えているのだろう。特に正解なんてものはないのだが。

「あの…」

「ん？」

「３つ、いいですか？」

青年の返事は、予想の斜めを上回った。まさかの複数注文。この時点で、彼への好感度は高まっていた。面白そうな子や。

「どうぞ」

「トーストと目玉焼きと、コーヒーが好きなんです」

「…！」

今度は俺が鼻から息を吐いた。なんて偶然だ。いや、俺と同じセンスの持ち主なのか。

軽い焦げ目がついたトースト、塩と胡椒で味付けした目玉焼き、そして苦くて熱いコーヒーが俺のおすすめだった。

「やっぱやめます！」

不正解と判断したのか、青年は慌てた様子で声を出す。俺は首を横に振って、安心させるように笑ってみせた。

「いや、３つともうちのおすすめなんや。ぜひ食べてくれ」