トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ38)

今日:35 hit、昨日:15 hit、合計:35,951 hit

88. ページ38

私は湯気が立つコーヒーカップを見つめた。私はコーヒーが苦手だ。それをすぐ見抜かれるくらいに。

また人懐っこい笑顔が浮かんできて、それをかき消すように私はカップに口をつけた。

「…美味しい」

「やろ」

私は思わず小瀧くんの顔を見た。にんまりと笑う顔はとても可愛らしい。

苦味が強いことには変わりないのだけど、後を引かない。少し酸味もあって、飲みやすいのだ。

「初めて、コーヒーを美味しいって思った」

「えっ、コーヒー苦手やったん！？」

それはごめん！と謝る小瀧くん。だけど小瀧くんのおかげで、コーヒーの美味しさを知ることができたのだ。

「ミルクと砂糖、これくらいでいい？」

「十分すぎるよ、ありがとう。何かおすすめのケーキはありますか？」

「えっと、シフォンケーキとかどう？」

濵田さんがいつか家で食べさせてくれたケーキだ。私はすぐに頷いた。

小瀧くんは面白いくらいに真剣な表情でシフォンケーキを切り分けていく。丸い形が切り取られていく様子を見るのは楽しくて、私はずっと小瀧くんの手元を見つめていた。

「朝焼いたやつやねん。どうかなあ。口に合ったらええねんけど」

弱気な口調で小瀧くんは、ケーキを渡してくれた。横に添えられたホイップクリームと、”moon light”とチョコペンで描かれた丸いクッキーが可愛い。

口に入れると、ケーキがふわふわと溶けていくのを感じた。濵田さんのよりも、少し甘い。