トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ32)

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「とりあえず帰ろ。送るから」

「…」

小瀧くんはそっと私の背中を押す。「2ケツします？」なんて言われたけれど首を横に振った。

本当は帰りたくないれど、わがままを言ってはいけない。私は素直に背中を押されることにした。

察しのいい小瀧くんは何も聞いてこない。ただ鼻歌を歌っていた。

「濵田さんと藤井さんが心配すんで」

「いつ知ったの？」

「ごはんの話してるの聞こえて、濵田さんに問い詰めた」

いつの話だろう。濵田さん、問い詰められたのか。

「まー、びっくりしたな。濵田さんと藤井さん、どっちとデキてるんやろうと思って」

「…」

「ほんだら新しい人も出てきて」

「…」

「なんか…苦しくなったな」

小瀧くんの言葉は夜空に吸い込まれていく。私は相槌が打てない。

「でも会えたら嬉しいねん。もう会わんって決めたくせに、今一緒に歩けて幸せ」

優しい声が涙腺を刺激する。ああ、小瀧くんは変わらない。今日は何を言われても泣いてしまうのだ。

再びぐすぐす泣き始めた私に、小瀧くんは歩みを止めた。ごめんね、先に行ってが言えたらいいのに。

小瀧くんは近づくと、そっと私の肩に手を回した。抱き寄せられる、と思った瞬間

ーーこういうの、ずっと続いたらいいよなー。

「え、Aさん？」

小瀧くんを突き飛ばしてしまった。