トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ19)

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「やば、ドキドキするわー」

照れ隠しするみたいに、重岡さんはあははと笑った。

少し骨張った大きな手が、その手から伝わる体温が、私の心臓をこれでもかと揺らしている。

私、幸せすぎて死んじゃうんじゃないか。

「女の子と手繋ぐなんかいつぶりや」

「…もう、前に付き合っていた人とは連絡取ってないの？」

気になっていたことを恐る恐る尋ねると、重岡さんは驚いたように目を丸くした。

「そんなことしてたら、Aちゃんと一緒におらんで」

「…そう、だよね」

嬉しい。良かった。安心した私は少し余裕ができたのか、重岡さんの手をもう少しだけ強く握った。

ぎゅっと力を込めれば、ぎゅっと力が返ってくる。何も話さなくても、心は通じているみたいだった。

好き…。

気を抜いたら言葉にしてしまいそうで、私は思わず立ち止まった。不思議に思った重岡さんが、私の顔を見つめる。

「Aちゃん？」

甘く、優しい声。どうしようもなくて、私は重岡さんの目を見つめた。酔いで少し潤んだ瞳が、少し上がった眉毛が、半開きの口が、全部全部愛おしい。

「…」

重岡さんは何度か瞬きをすると、もう片方の手で私の頬を撫でた。思わず目を瞑ると、重岡さんの手がゆっくりと止まる。

数秒後、唇に柔らかいものが触れた。触れては離れるを繰り返すそれが重岡さんの唇だと気づいた時には、私も彼のキスを受け入れていた。