トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ18)

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「明日も会う約束したのにごめんな」

金曜日の夜。待ち合わせ場所に現れた重岡さんは、眉を下げて笑った。

謝ってほしくなんかない。むしろ嬉しい。

「こないだ会社帰りに飲んで楽しかったからさ。こういうの、ずっと続いたらいいよなー」

重岡さんと並んで歩くことも、甘い言葉も、少しは慣れた。だけど、まだドキドキする。今だって胸に愛しさが溢れて、上手く返事ができない。

「明日はなんかゆっくりしたいよな」

「わかる」

「広い芝生に寝っ転がってさ、好きなだけ昼寝すんの」

「めっちゃいい！」

「ほんで帰りにAちゃんの好きなもん食べて帰ろ」

初めてのお出かけのはずなのに、今までそうしてきたかのような口調で重岡さんは予定を話す。

こんなに自然体でいられる人がいたなんて。こんなに近くにいたなんて。

２人で飲んだお酒もすごく美味しかった。重岡さんは酔うと、耳の裏が赤くなることを知った。

相変わらず、重岡さんは帰り道と反対方向にある駅まで送ってくれる。

「めっちゃ冷えてんなー」

「寒いね」

重岡さんが両手を擦り合わせる。そのまま前を見据えたので、その方向に目をやるとカップルが手を繋いでいた。

…羨ましいなあ、なんて。

言いたいけど言い出せない微妙な距離感。前を向いたままの重岡さんに何か声をかけようとした時、左手に温もりを感じた。

「手、繋ぐ？」