トーストと目玉焼きと、コーヒー２ (ページ11)

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１５分が過ぎた。１２月を目前にしたこの時期、夜は冷えこむ。

マフラー巻いてくるんだった。いつまで待てばいいんだろう。

思わず下を向いたとき、遠くからパタパタと音が聞こえてきた。

「Aちゃん！」

名前を呼ばれて顔を上げると、重岡さんが乱れた前髪を整えながらこちらへ駆け寄ってきた。

待ち合わせに来てくれたことへの安堵と、呼び方が変わっていることへの驚きとで身体中に熱が回る。

「待たせてごめん」

「大丈夫ですか？」

「会議が長引いて…終わった瞬間飛び出してきたわ」

息が荒いままニッと歯を見せて笑う重岡さん。ああ、この笑顔に会いたかったんだ。

思わず見つめていると、重岡さんは心配そうに眉毛を下げた。

「ほんまごめんな。寒かったやろ？」

「大丈夫です。そんなに経って…」

上げてみせた口角、頬の辺りに重岡さんの指が触れた。息が止まってしまいそうになる。

「冷たい。寒かったんや」

「…」

声が出ない。心臓がドキンドキンと大きな音を立て始めた。

重岡さんは自身が巻いていたマフラーを首から外すと、私の首にふわりと巻いた。

首元から温かいにおいがする。洗剤と、重岡さんのにおい。

「くさかったらごめん」

少し照れて謝る重岡さんに、私は無言で首を振った。

好き。好きです。幸せが溢れて、胸が甘く重く痛んだ。