トーストと目玉焼きと、コーヒー (ページ26)

今日:1 hit、昨日:38 hit、合計:50,515 hit

26. ページ26

一瞬胸がひゅっと冷えて、徐々に熱を持ち始めた。

返事は決まっているのに上手く言えない私に、不安になったのか「いや、よかったらって感じで…嫌なら全然断ってもらっても…」と弱々しい声が聞こえた。

「ううん、行く。行きます」

「ほんま？嫌々じゃない？」

「うん。私も行ってみたいと思ってたから」

思い切って付け足すと、顔が一気に熱くなる。電話でよかったと心から思った。

はーとため息が聞こえて、「よかった。ありがとう」と小瀧くんが返事した。

「いつにする？Aさんに合わせる」

「直近なら今週の木曜、仕事終わりとか」

「じゃあ木曜にしよう。何か食べたいものある？」

さっきまでのカチンコチンな空気が嘘みたいに、会話はまたいつものテンポを取り戻していく。こんなやり取り、久しぶり過ぎて上手く答えられているのか自信がない。

「イタリアンとか、好きかな」

「了解。場所は…」

「場所は小瀧くん家の近くで大丈夫だよ」

不自然に被せてしまった。会社の最寄りも困るが、自宅の最寄りはさらに困る。

「んー、俺ん家の周り何もないんよなあ。この辺嫌ならちょっと出て◯◯の方行く？」

「うん。大丈夫」

「わかった。良さげな店探してみるわ」

「ありがとう。楽しみにしてます」