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次の日、俺はまたあの駄菓子屋へ向かった。
なぜか?財布を忘れたからだ。
気づいたのは昨夜寝る前。
こっちで通う病院の予約を入れる際に保険証の持参をお願いされて、そういえば財布に入っていたななどと考えて「あっ」となった。
病院知らずだった俺がまさか心療内科に通うことになるなんて。
「すいません」
遠慮がちに玄関を開けるが、誰もいない様子だ。鍵は開いたままで良いのか。
俺は玄関先をぐるぐると見回す。無造作に置かれた駄菓子を見ていると、懐かしい気持ちになった。
「何してるんかなあ」
思わず溢れた言葉は俺の本音だと思う。オカンの言った通り、俺は2人に会いたかった。
キーッ
ブレーキ音がしたかと思うと、昨日の彼が慌てた様子でパタパタと走ってきた。
「なんや君か!玄関開いてたから泥棒入ったんかと思ったわ」
「す、すいません。鍵開いてたんで」
「えっ、僕閉め忘れたんかな」
彼は不思議そうに首をひねって、両手を頬に当てていた。
構わず玄関先を見回していると、今度は肩を優しく叩かれる。
「あっ、はい」
「君は何を探してるんや」
俺を見つめる大きな瞳と目が合う。
心の中を見透かされたような気がして、下手に返事することが出来なかった。
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作者名:Hana | 作成日時:2020年8月15日 18時