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薬と財布とスマホ。
それらを全部ポケットに詰め込んで、家を出た。
知り合いに顔を見られるのは嫌だから、コンタクトを眼鏡に変えて、似合わない帽子を被った。
なんでこんなコソコソしなあかんのやろ。
俺は昔の記憶をたよりに懐かしい道を進んだ。
俺と流星で作った秘密基地には美容院ができていたし、好きやった女の子の家には車が一台増えていた。
「あった…」
昨日夢に出た公園の裏にある住宅街に、駄菓子屋はあった。驚いたことにほとんど変わっていない。
茶色いポストは茶色いままで、背丈が俺より小さくなったことが月日の経過を表していた。
来たものの、何をすれば良いのか。
夢の中と変わらず目を白黒させて戸惑う俺の前で、玄関が開いた。
「あっ」
「ん?」
中から出てきたのは、駄菓子屋のおじちゃん。
いや、おじちゃんなんやけどさらに若くなったっていうか。普通は老けているはずなのに。
「どないしたんや」
頭上にハテナを浮かべるような表情をするおじちゃんの声はあの頃と全く変わっていなくて、
「な、なんで」
と声に出してしまった。
日本人離れした大きな黒い瞳と、厚い唇は、記憶のおじちゃんと何も変わっていない。だけど、おかしい。若返っている。
「若返ってるんですか」
「へ?」
おじちゃんは目を丸くする。すぐに目を細めてにやりと笑うと、俺に低くつぶやいた。
「僕、魔法使いやねん」
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作者名:Hana | 作成日時:2020年8月15日 18時