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ロビーのベンチに戻って、俺は神ちゃんと話をした。
「神ちゃん、兵庫に帰ったって聞いたで」
「うん。でもまたこっち戻ってきてん」
兵庫で最期を迎えるかと思いきや、少し体調を回復した神ちゃんは復学するために大阪へ戻ってきたらしい。
それでも病院生活から離れることはできず、入退院を繰り返しているのだとか。
「今何してんの」
「入院生活の傍ら、通信で大学通ってる」
文学部でスペイン語の勉強してんねん、と話してくれた。神ちゃん、頭良かったもんなあ。
「この先どうなるかはわからんけど、とりあえず普通に生きたいねん。自分で自分のこと養える人間になりたいんよ」
ふふ、と笑う神ちゃんはやっぱり俺の何倍も大人だった。俺は自分のことを話すのが恥ずかしくなり、何も言えなくなってしまった。
「シゲはどっか悪いの?」
「心の風邪」
遠慮がちに尋ねてくる神ちゃんと目を合わせられない俺は、自分の足元を見てボソボソと返事をした。
神ちゃんはそっかと言って、小さくため息をついた。
「ほな、今がシゲの夏休みなんやね」
ロビーの扉が開いて風が舞い込んでくる。
爽やかに笑った神ちゃんに、俺はうんと小さく頷いた。
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作者名:Hana | 作成日時:2020年8月15日 18時