魔法使いと夏休み (ページ45)

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流星はボールを待っている。俺はボールに足をかける。

動かない。足が動かない。流星がいらついたような表情をする。

ちゃうねん、待ってくれ。

「はよ蹴れやあ」

「ちが、流星」

「この下手くそ！」

聞いたことない流星の怒声とともに、場面が切り替わる。騒がしい歓声、さっきより広くなったフィールド、赤と青のユニフォーム。

ああ、これはあの日の。

「下手くそ！」

「二度とボール触んな！」

「サッカーすんなよ！」

やめてくれ、やめてくれ、俺は

「サッカーしたいねん」

「大毅？」

はっと目を覚ますと、オカンが俺の顔を覗きこんでいた。

「えらいうなされてたから。顔色も悪いで」

「あ…夢か」

身体を起こそうとするがひどく気分が悪い。俺の体調を察したようで、オカンは俺にタオルケットをかけてくれた。

「また体調落ち着いたら、やったらええよ」

「何が？」

「サッカー。やりたいって言うてたよ」

そんなわけあるか。二度とやりたない。

それでもオカンの目は俺を優しく見つめていた。

翌日、体調が回復しなかった俺は病院へ向かうことにした。せっかく減らしてもらった薬を増やしてもらうために。

「濵田は15時から空いています」

急に行ったものだから診察までしばらく待つことになった。暇だった俺は、売店で雑誌を買うことにした。