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「昔な、僕のことを魔法使いやって言うてくれた人がおってん」


微笑んだまま中間さんは続ける。


「僕より5歳も上やのに、子どもみたいに素直で分かりやすくて、めっちゃ優しい人やった」


目尻に皺を寄せて笑う顔は、まるで恋人の話をする女性のようで。


「その人がちょうど重岡くんみたいに心の風邪引いてな、僕は助けたかったのに傷つけてもうて」


ーー僕の友達にもおったわ


あの人のこと。


前を見据えていた中間さんの視線は組んだ足に落とされた。


「もう会わん、って言われた」


ーー会いたい人にもう会えない気持ち、わかりますか


ーー痛いくらい、分かるで


「中間さん」


「ん?」


「その人のこと、好きやったんですか?」


「うん。大好きやった」


男の人やったけど、と小さく付け足した中間さんに俺は上手く返事ができなかった。


彼がまとう花のような香りは勘違いではなかった。彼は男性で、愛する人も男性なのだ。


「言わん方が良かった?」


中間さんは眉毛を下げて困ったように笑う。その顔でさえも綺麗で。俺は首を横に振った。


「そんなん…気にしないです」


心からそう思っている、と気持ちを込めて返事すれば、中間さんは少しだけ表情を明るくした。

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作者名:Hana | 作成日時:2020年8月15日 18時

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