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「やめときなさい」


「なんでえな」


今俺は玄関先でオカンと揉めている。


「あんた昨日熱あったんやで?ちょっと調子乗りすぎや」


流星くんらに迷惑もかけてんのに、とオカンは眉をひそめる。くそ、実家暮らしの有り難みと居心地悪さの両方を思い出したぜ。


「急にどないしたんよ。会うつもりないって言うてたくせに」


「う、なんか会いたなったんや」


まるで遠距離の恋人を想うような台詞を発してしまい、1人でに顔が熱くなる。オカンは相変わらず顔を歪めていた。


「なあ、どい」


「神ちゃん、もうおらへんのよ」


「…は?」


オカンの顔は歪んでいた。下がった眉毛と硬く結んだ唇が、怒りで歪んだわけではないことを表している。


もうおらへんって?


「神ちゃん、入院してからどんどん悪くなって寝たきりになったんよ。お医者さんにも長くないって言われて、智子さんは神ちゃん連れて実家帰りはったんや」


最後は家族みんなで静かに過ごせるようにって、と付け足したオカンの声はどんどん遠く聞こえた。


神ちゃん、もう生きてへんの?


神ちゃんに、もう一回会われへんの?


「私もだいぶ前のことやったから、あんたと話するまで忘れてたんや。私が2人の話したのが悪かったな」


気がつけば俺はオカンを推し退いて、外に飛び出していた。

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作者名:Hana | 作成日時:2020年8月15日 18時

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