恋とWEST (ページ9)

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初彼 T ページ9

初めての彼氏は、歳上で社会人の崇裕くんだった。

スーツ姿を見たくて、会社帰りによくデートをした。

崇裕くんは本当に優しい人で、私の話を聞くのが上手だった。

私がトマトが好きだと話すと、お店でトマトのメニューを見つけるたびに教えてくれた。

「A、トマトのカプレーゼあるで」「トマトソースとガーリックソースあるけど、トマトにするやんな？」

トマトばっかりだな、と可笑しくなった時もあったけれど、そんな崇裕くんが大好きだった。

その優しさに甘えすぎていたんだと思う。

少しくたびれた顔に嫌な歳の差を感じたり、ときめきが欲しくなったりした私は、崇裕くんに別れを告げた。

私も社会人になって、今度は歳下の彼氏ができた。

「俺ステーキソースがいい！」

「じゃあそれにしよう」

「やった～」

にこにこ笑う望は、可愛い。

だけど、時々恋しくなるのだ。

トマトのメニューを指さす崇裕くんの笑顔が。