恋とWEST (ページ4)

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会社の上司 T ページ4

やらかした。

私は印刷室で固まっていた。

印刷した大量の資料に、たった一つのミスを見つけた。

時刻は22時。泣いてしまいそう。

「誰かおるん？」

印刷室の扉が開いて、暗闇に光が差した。

同じ島の濵田さんだ。

「あれっ、まだ帰ってなかったん」

「濵田さん…」

「え？泣いてる？」

暗闇なのになぜ分かったのだろう。濵田さんはすぐに駆け寄ってくれた。

「明日の会議に使う資料、今刷ったんですけどミス見つけて…」

「あらあらあら」

濵田さんは私の手から資料を取ると、目を通してふむふむと頷いた。

「こんなんすぐできる。俺やっとくからもう帰り」

「そんな、できないです。私のミスなんで」

「1年目は上司に仕事押し付けてはよ帰らなあかんの。俺もそうしてきたからな」

悪戯っ子のように笑う濵田さんに、涙が止まらなくなる。

しゃくりあげる私に、濵田さんは「ほら泣かない泣かない」とハンカチで涙を拭ってくれた。

「今日残業しといてよかったわ」

「本当にすいません…」

「違う！違うの」

濵田さんは、へへっと笑うと私を真っ直ぐ見つめた。

「気になってた子に、ええかっこできたからやん？」