幼なじみ T ページ13
智洋は唯一小中高が同じ同級生だった。
このような存在を幼なじみと呼ぶのだろうか。
2人で出かけることなどはしなかったが、何となく一緒に帰ったり、何となく連絡し合ったりする関係だった。
そんな私たちも大学進学を機に、地元を離れた。
大学2年目のお盆、実家で過ごしていると智洋が連絡が入った。10年近く一緒にいて、初めて誘われた。
地元の居酒屋で、智洋はビールを頼んだ。
甘いものが好きだったのに。知らないうちにビールを飲むようになっている。
そう言えば中高は派手な髪色をしていたのに、今は落ち着いた茶色の髪を綺麗にセットしている。いつから襟付きのシャツを着るようになったんだろう。
「なに、そんなに見つめて」
「いや、雰囲気変わったなって」
「そっちこそ、なんか大人っぽくなって…彼氏できた？」
上目遣いで答えを待つ智洋。ああ、この表情は変わっていなかった。
「できて…ない」
「ほんま？」
「悲しいけどほんま」
「じゃあ、今は彼氏おらんねんな」
念押しされるとさらに悲しくなるが、豪快にビールを仰ぐ智洋に悲しいような浮ついたような妙な思いを感じていた。
「明日暇？」
「え？…暇やけど」
「ほな遊びに行こ。２人で」
意味が分かると、私の頬は熱を帯びた。智洋はビールのせいか台詞のせいか、すでに真っ赤だった。
「いいよ」
「え！…ほんまか、ありがとう」
「てかビール飲めたんやね」
「飲まれへんわ。緊張してわけわからんまま頼んでもうてん」
「緊張？」
「お前を誘うことや」
智洋は残りのビールを仰った。
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作者名：Hana | 作成日時：2020年6月21日 17時
