ピース 〜人口増加の果てに〜 【ホラー】

１、１０年前の夏 ページ2

神崎翔(かんざき しょう)は現在中学２年生だった。

部活は陸上部で、勉強もそこそこだが、彼には大きな悩みがあった。

１０年前、生き別れとなってしまった双子の姉、風花(ふうか)の存在であ

る。


時はさかのぼり、１０年前、翔と風花は４歳の夏だった。

その日は家族でドライブをしていた。

「ママ〜楽しいね！」

「ふふふ、そうね」

両親は優しい眼差しを二人に向ける。

「パパも楽しいよ」

「僕だって！」

平和そのものの光景だった。

ところが悲劇は突然訪れた。

崖沿いの道でカーブがあったのだ。

そこで対向車をよけきれず、正面からぶつかってしまい、あっけなく両親は

死んでしまった。

翔と風花は幸い後ろの席だったため助かったものの、悪夢の惨状があった。

さっきまで笑っていた両親の体にはガラスが突き刺さり、ピクリとも動かな

い。

風花は泣き叫び、翔の腕にもガラスで傷がついていた。

今現在腕にある傷跡はこのときのものである。

痛いというよりも、何も考えられなかった。

すぐに救急車が来て、両親は病院へ搬送され、翔も手当てを受けたが、この

ときの記憶はなかった。

両親はすでに息を引き取っており、祖父母も他界しているため、翔と風花に

は身寄りがなく、二人は別々に引き取られた。


―それから１０年の月日が流れ―

２、１２月１７日→←０、プロローグ

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