教授との仕事 ページ12
エーミールの部屋には、大量の本がある
壁一面に本棚があり、まるで小さな図書館だ
それをすべて管理しているだけで驚きだが、どこに何があるかもわかっているというので、彼はとてもきれい好きなのかもしれない
「グリムさん。お久しぶりです」
「えぇ。またお茶会に呼んでいただき光栄です」
エーミールのしわ一つないベストには、以前彼女があげた蝶のバッジがついている
「まさか貴女が白い死神とは思っていなかったですよ」
「また、冗談を」
グリムは楽しそうにエーミールの部屋にある本を取る
その本は古びていて、革の表紙だ
題名は「Witch and the boy」
ある有名な小説家が書いた本だ
「なぁんだ。この本まだ持ってたんですか」
パラパラとページをめくり、グリムはにやにやと笑う
「えぇ。この部屋唯一のファンタジー小説ですよ」
その返答に、グリムは満足そうに笑う
この本、読むたびに内容が違うのだ
エーミールはその魅力にひかれ、その本を今も大切にしまっている
「さて、お茶会の前に一仕事しますか」
「私はできの悪い生徒なので丸付けはできませんよ」
「ちょっ、冗談はやめてください」
約一時間後
ようやく生徒たちの丸付けが終わり、二人はため息をついた
「やっと終わったぁ」
「ありがとうございます。では、紅茶を淹れてきますね」
そういって部屋の奥に消えそうになるエーミールを、グリムは引き止めた
「私も何か…」
グリムの言葉に、エーミールはニコッと笑う
「客人に準備をさせる趣味はありませんので」
彼の紳士的な対応に、グリムは潔く引いた
「やっぱかなわないなぁ」
その言葉はまるで、エーミールのことを知っているような口ぶりだ
ヒュン
そんな音と共に、エーミールはグリムの前に現れた
「準備が整いました」
真っ白なカップの中に、透明感のある茶色の液体が入れられる
その中にグリムは角砂糖を二個入れて、かき混ぜる
音をたてないように、冷めないうちに溶かすように
「いただきます」
エーミールの淹れた紅茶はとてもおいしい
「前より上手になった？」
「それは光栄です」
次に、ショートケーキに目を移す
イチゴは宝石のようにきれいで、食べてしまうのがもったいないくらい
「ねぇ、私イチゴ嫌いって知ってるでしょ」
「なら私に下さい」
グリムはそれにムカついて、フォークにさして彼の口に入れた
「んむっ」
「どう？気に入ってもらえたかしら」
「…えぇ。とても甘くておいしいです」
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