スクールデイズ（6）

モヤモヤの正体 ページ43

tkk said

今日の有岡くんの歌は、少しだけ音程が外れている気がした。

有岡くん、明るく振る舞ってるけど誰より伊野尾くんのこと心配してるんだろうなってのは薄々気づいてる。
俺が思ってるより、こういうとこ大人だから。

だってほら、今目を擦ってるのだって。
一瞬潤んだ彼の目を、向かい側の俺は見逃さなかった。

光くんが続きから歌わせようとしてるけど、きっと今は歌える気分じゃないだろうな。

やっぱり今日は薮くんの言った通り、練習を休んで勉強会にでも…。


宏「待って、大ちゃん抜けた睫毛目に入りそう」

大「え」

有岡くんの右隣に薮くんが近づく。
背が高いと言われる俺よりも身長が高い薮くんだ。

必然的に有岡くんが上目遣いになるのは分かってるけど…。
目に入りそうな睫毛を取ってるだけなんだってのも分かってるけど…！

“取れた”って微笑む薮くんのこと、そんなに見つめなくても良くない！？
それもこんな、こんな至近距離で！


大「…たか、き？」

雄「、っ！」

有岡くんに名前を呼ばれて、モヤモヤした感情から我にかえる。
自分の手は、有岡くんの肩に添えられていた。

薮くんとバッチリ目が合う。

無意識に動いたんだろう、驚きのあまり肩から手を離して、反射的に後ろに下がった。

雄「あーっ、これはなんていうか、その！
…わっ！！」

大「あ、危な」

ガシャーン！！


大「大丈夫？」

雄「だい、じょー、ぶ…」
後ろに転倒しそうになったけど、足の踏ん張りを利かせたため幸いにも体には全く影響なかった。

振り返ると、後ろに立ててあった譜面台に足が引っかかり倒してしまったらしく、留めてあった楽譜が床に散らばっていた。

宏「あー、わり。
拾うの手伝うわ」

雄「い、いいよ！
誰にでも優しくしないでいいよ薮くん！」

宏「そ、そうか…？」
薮くんが申し訳なさそうに眉を下げてから身を引いたのを見て、心がまたモヤモヤした。
あぁ、せっかく薮くんが手伝おうとしてくれたのに、なんか当たっちゃった。

雄「ごめんね、薮くん…」

宏「いや、俺もお前の気持ち考えてなかった」

大「ええ、なにこれどういう状況…？」

有岡くんの困惑気味にうろたえる。
まさか、君のことが原因だなんて言える訳がない。

モヤモヤの正体は分かった。
これは「嫉妬」。

でも、それは親友の薮くんに対して向けていいものなの？



光「全く、誰にでも優しくしてんのはどいつだよ」

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