月と銃声２【SERVAMP】 (ページ9)

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クロカンブッシュページ9

あまり長く滞在すると御国にも怒られるし、痺れを切らした露木が突入してくる。その辺は適当に吊戯さんが対処してくれることを祈って、書類の山を崩し始めた。

「やっぱり、ないんですかね…」

床に座り込み、はぁ、とため息を吐く。そんな私を嘲笑うかのように一枚の紙が棚からひらりと落ちた。8番目、椿の下位吸血鬼の書類だ。短髪でナース服を纏った女性の写真とともに、情報であろう言葉が綴ってある。こいつは確かオトギリといったか。あの夜、ビルの上で糸を使っていたやつだ。
その紙は薄いけれど、詰まった情報はとても重い。紙を拾って立ち上がる。棚の上に積んである書類の山のところに戻そうとしたとき、その紙に書かれた見覚えのある文字に目を見開いた。

「…“出身地、ドイツ”…？」

じゃあ、この書類の山は…？
そう高くない棚の上に積まれたそれ。その山の確認は怠っていた。一度彼女の紙を足元に置き、書類を山ごと降ろす。
そこからは早かった。無我夢中で書類の山を崩していき、文字だけを確認する。ドイツ関連の資料で間違いないようだった。
吸血鬼の書類がこの山にあったのは、前回誰かが資料室に来たとき適当に置いたからだろうと推測できる。

「…っ」

数枚の書類がホチキスで留められたそれに息を飲む。

“ドイツ支部C3職員、襲撃事件”

興奮か恐怖か、よくわからない感情で震える指はゆっくりとその紙をめくる。そこに載せられていた写真は、記憶の奥底にいる、優しい母の姿だった。