月と銃声２【SERVAMP】 (ページ18)

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ギモーヴページ18

それからまた少し経った頃、やっと状況に変化が訪れた。

「お兄ちゃんっ！？」

……悪い方向に。いきなりふらりと兄が倒れたのだ。私は駆け寄って、せっかくこらえた涙をまた溢れさせそうになりながら、兄を呼んだ。

「……大丈夫だよ、エリーゼ。お兄ちゃんちょっと疲れちゃったからさ。先に行っててくれる？」
「で、でも…」
「大丈夫、すぐに追い付くから。さあ進むんだ」

そんなのやだ。そう言おうとしたとき、急に強い風が私の背中を押した。

「大好きだよ、エリーゼ」

身体が宙に浮く感覚と、どうしようもなく込み上げる悲しみがずっと忘れられない。
今に至るまで、兄とは二度と会えなかった。

　その後森で倒れていた私はリリイに拾われ、有栖院家で暮らすことになる。

思えば、兄はクッキーを一枚も食べていなかった。

思えば、母と兄は魔術を使っていた。母は森の声を聞くのが得意なの、とよく言っていた。

思えば、母は私たちを見つけられたはずだった。昔迷子になったときはすぐに見つけてくれた。

思えば、迷子だったのに兄は街の方向をわかっていた。

思えば、私はひどく愚かだった。

巡り続ける疑問は次第に収束し、やがてひとつの結論にたどり着いた。私たちは捨てられたのだ。

「どうして……？」