Episode85 ページ47
「何かわかったのか？」
「ああ」
Aは無言でしばらく歩き続ける。しばらくすると目の前に洞穴が現れる。
「…ここは」
ノイシュが何かを思い出したころにはAは中に進んでいく。
「Aさん！明かりもなしに入っては…」
「ん？」
いつの間にかAの手には火の玉が現れており、あたりを照らす。
「ノイシュよ、Aに常識は通じぬぞ」
「…」
「行くぞ」
先に進んでいくと、少し広い空間があった。そこで立ち止まったAは突然火の玉を大きくする。
「なっ…！？」
その明かりに照らされ現れたのは少年だった。
「…お前が、飴屋の息子だな」
「ノ、ノイシュ様…！？」
驚いた様子の少年。それと同じようにノイシュも驚く。
「どうしてこの場所が…」
「幽世の軍勢を操っていたのはアドバンだ。アドバンは無意味な殺しはしていないよ。下位天司で抑えきれるほどしかこの島を襲っていない上に、そもそもどこにも死人は出ていないんだ」
「…つまり、脅かすことが目的だったと？」
「いや、僕を誘き出すことだろう。少年、さあ帰ろう」
「う…い、いやだ！」
Aの手をはねのけて少年は奥へと逃げ込む。慌ててノイシュが追いかけたが、Aはその場から動かない。
「…どうしたのだ？」
「いや…あの子供、もしかすると…倒しに行ったんじゃなくて、何かを守りに来たんじゃないかとね」
「守りに…」
「スカーサハ…いや、ディアドラ様なら何かご存じで？」
「…ああ、そうだな」
ノイシュを追いかけて二人も走り出す。その先ではノイシュと少年が対峙していた。
「明かりもなしに走るなノイシュ…」
「スカーサハ…」
「少年、お前が守りたいのは真龍の祠か？」
「…！」
少年の顔つきが変わる。そして後ろを振り返るとそこには小さな祠があるのだった。
「…ここは、俺の母さんが造ったんだ。昔、魔物がたくさん襲ってきたけど…俺と母さんはずっとディアドラ様討伐反対だったんだ。なのに…」
「ディアドラは力を失った、と。そして、そこにある墓は母君か」
Aは奥へと進み、祠の前へと向かう。それを阻止しようと少年が駆けだすが、ノイシュに阻まれる。
「放せ！近づくなよ！」
「こ、こら…」
Aはじばらく祠の前で膝まづくと、墓の前に目線を向ける。小さく何かをつぶやくと、突如空間が光り輝く。
「…え？」
「な、なにが…」
「スカーサハ…少しだけ、いいか？」
「仕方あるまい」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
