Episode78 ページ41
「…それで、騎士団を鍛えると?」
「ああ、けど団長がいい断り方を教えてくれた。喫茶店をサンダルフォン一人でやるなんて無理だし」
「…そういうことか」
しばらく考え込んだサンダルフォンはAの手を握って歩き出す。
「な、なんだよ」
サンダルフォンがたどり着いたのはヘルエス達の待つ談話室だった。
「おや、サンダルフォン殿もいらっしゃったのですか」
「ああ、少し話が合ってな」
「僕は喫茶室が――――んぐっ!?」
サンダルフォンに口をふさがれるA。サンダルフォンは顔だけヘルエスに向けると、驚きの言葉を口にする。
「一年間、Aを頼んだ」
「んぐ…はぁ!?」
「いいのですか?先ほど何か言いかけましたが…」
「喫茶店だよ!一人でどうする気だよ!」
「休むのもいいだろう」
「何回休めば気が済むんだよ!いい加減つぶれるぞ!」
「…A、少し君は外の世界を見た方がいい。俺はまだ多くの事を学ぶ必要があるが、君はもう外で何かを得た方が効率的だ」
「…は?」
サンダルフォンの言葉の意味が分からず、不機嫌な顔になる。
「どういう意味だよ、それは」
「集団を俺の代わりに学んできてほしい」
「そんなの、天司の一群だってそうだろ?」
「圧倒的な力を持つもの同士の集団は、個々で機能することができる。今のそこのエルーンの国のように、互いに助け合って立ち直る姿を学んで俺に教えてほしい」
「…なら、一緒に行けばいいだろ?」
「…」
サンダルフォンは静かに首を振る。Aはそれ以上何も言わず、無言でその場を立ち去る。
「言い方がよくありませんね。素直に言えばよかったのですよ」
「セルエル、やめなさい。事情があるのですよ」
「姉上、この場合ははっきり言わないと…」
「…」
「…サンダルフォン殿、貴方も離れるのは寂しいのでは?」
「…どう、だろうな」
サンダルフォンの声音はヘルエスの言葉を肯定する。しかし、言葉は素直に出てくることはない。
「様々な問題から離れて、気を晴らしてほしい…そう願ったのでは?」
「…いや、そんなんじゃないよ。俺はただ…Aはもっと広い空のが似合うと思った」
この船の上だけで喫茶店をやり続けるのは、あまりにもったいないと感じていた。天司や堕天司というしがらみのなくなった今、多くの事を見てほしいと思った。
「かつて、人間をひどく嫌っていたAが、こうして人間と協力して俺を救った。その力は、Aの力だ」
「…ふふ」
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年4月7日 14時