Episode75 ページ38
「…ッ！」
Aの一撃を凌ぐグラン。間を取って剣を握ると、僅かな痺れを感じる。
(本当に、世界にはまだまだ強い相手はいるんだ)
身近にいた大きな力に胸が躍る。自分の力を精一杯試そうとAに向かっていく。
「…フフ」
「どうしたの？」
「いや、なんだか懐かしいと思って」
「…ん？」
「何千年も前、今の団長と同じようにサンダルフォンと剣を交えてたんだ。純粋に強くなりたいと向かってくる刃は、昔は恐怖でしかなかったけど…今は、とても楽しいよ」
「へぇ…余裕だ…ねっ！」
グランの一撃を剣で受け流すA。しかしそれを見越したグランはAの背後に素早く回って攻撃を仕掛ける。
「…へぇ、やるな」
「…！？」
完全に勝ったと思った矢先、グランの剣はAの剣に阻まれる。
「うわぁ…」
目線が向く間もなく反射的に剣を背後へと向けるA。その刃は確かにグランの首を捉えるのだった。
「背後を狙うのは常套手段だ。となればとる行動は一つ。カウンターだ」
「ど、どうして…よける、とかは？」
「よけると必然的に不利になるのは自分だ。体制がその分崩れるからね。それに、相手も背後を取った時は油断しやすい」
「…う」
思い当たるのかグランは小さくうなる。
「…さ、終わろうか。船に戻らないと心配をかけそうだ」
「うん。あ、そうだA」
先を歩いていたAは振り返る。
「ん？」
「剣以外は使えないの？」
「…剣、以外…魔道弓と双剣、魔法に素手、あとは楽器ってところか？」
「ま、魔道弓！？そんなことも出来るの！？」
「楽器の顕現ができて弓の顕現ができないわけないってことだ」
「短剣や槍は？」
「基本的にやったことがない。斧も同様だ」
「へぇ…」
「また、今度相手になるよ」
「うん、ありがとう！」
グランが返事を0終わると同時に元いた船へと景色が戻る。Aは何事もなかったかのように、箱に腰かけて愛刀の手入れをする。
「…今度は負けない」
いつか超える、と固く誓う。一方Aは、先ほどの戦いの感触をかみしめていた。
(本当に人間なのか怪しいな…獣を倒す人間は何人か知ってるけど…すでにそんなのじゃ相手にならない…天司である僕がここまで押されるなんて)
手に残る僅かな痺れは、興奮を感じさせるのには十分だった。
「はぁ…まだまだだなぁ。今度は槍でもやってみようか」
「君は何を目指してるんだ…」
「あれ、サンダルフォン」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
