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Episode72 ページ35

「…望まない、か」

黒衣の男を殺したとして、それで気分が晴れるものでもない。時空の狭間にいる二人を殺したとしてもルシフェルは帰ってこない。それがわかっているからこそ、Aは自分の中で感情を押しとどめ続ける。

「…いつか、癒されるときはくるだろうか」
「来ないかもしれないね。だって、二千年の時の記憶を持ってるんでしょ?だったら、たった数年じゃ忘れられない。けど、忘れるんじゃなくて、考え方を変えてあげることはできるよ」
「…変える?」
「サンダルフォンは、今何を考えてるの?」
「…あの御方の愛した空を…この蒼き空の行く末を見届けたい…Aとともに」
「なら、Aは?」
「…復讐」
「…サンダルフォンも、そうだったんじゃないかな。だから、天司長じゃなくてサンダルフォンとして声をかけるべきだよ」
「…フッ」

グランの言葉に、サンダルフォンは僅かに笑みをこぼす。

「…そこまで言われて、動かないのはナンセンスだ」
「それじゃ、僕はこれで」
「団長、あの女の騎士はルリアと先刻、話をしていた。女の騎士は二人もいるのか?」
「あ、あはは…」
「ありがとう」
「うん、役に立てたならよかったよ」

グランはサンダルフォンの部屋から出て数歩で立ち止まる。

「…気配を消してたの?」
「…聞くつもりはなかったけど、僕がそこまで心配かけてるのかって思ったらつい」
「そっか」
「…」

Aは黙り込むと、そのまま歩いていく。あとについていくと、立ち止まったのは外だった。

「黒衣の男…ベルゼバブが憎い。失敗作だといった奴らが憎い…けど、ルシファーやベリアルがいなければ僕はいなかった。そうなった時、このやるせなさは行き場を失って膨れ続ける。そもそもの元凶はなんだったのか、って考え続けるのも…もし、たとえば、って考えるのも…どうでもよくなる時がある。そうなると、目先の敵に目が行くんだ」
「…僕には、自分の存在自体を否定してるように見える」
「…鋭いな。そうだな…」

グランに歩み寄ると、額に触れる。

「…!?」

その瞬間、白い空間へと意識が飛ばされる。

「この空間は僕の意識空間と団長の意識空間をつなげたものだ。四大天司やハーマーが武器に力を与えるときに見たようなものだと思っていい」
「…それで、どうしてここに?」
「団長…いや、特異点。そもそも特異点とはこの空の世界の進化の中心に位置するものだ」
「進化の…?」

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作者名:御煉 | 作成日時:2019年4月7日 14時

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