Episode56 ページ19
「お待たせしました。ポテトタルト、幸せの味と、メルクマベリーのレアチーズムースです」
ケーキをもって現れたのはAだった。
「覗きはいい趣味じゃないな」
「あう…」
「わ、悪かったよ…」
口々に謝る団員にAは吹き出す。
「ま、ルリアのお陰でおもしろい体験もしたよ。頭なんて撫でられた事、なかったから」
「ふふ…とっても嬉しそうに笑ってましたもんね!」
「こうなっちまうと、本当にお前ら天司が何もんかわかんねぇぜ」
「同感だ。僕もわからない。簡単にいえば原初の獣の中でルシファーとルシフェル様の一群に属する者だ」
「それはわかってるけどよぅ。本当に二千年も生きてるのかってぐらい馴染んでるよな」
「サンダルフォンは世間知らずだが、僕は人間の事をよく知ってる。楽器職人や商人、傭兵にコックと色々試したからね」
「おいおい…お前本当に天司か?」
呆れたようにいうビィにAは少し考える。
「なら、赤き竜であり、特異点を特異点たらしめる存在である君には、自分の事がわかっていると?」
「う…」
「まあ、どうでもいいんだよ種族なんて。ビィはビィだ」
「そうだな!」
「僕は…僕だ。それは何であっても変わらない」
最後の言葉は少しの決意が籠る。その少し後ろのテーブルにはルシオが座っているのだった。
「そろそろ離れるよ。ごゆっくり」
「はい!ありがとうございます!」
「ありがとう!」
奥に戻るとサンダルフォンが待ち構えていた。
「君らしい答えだ」
「どうせ、ナンセンスだって言うんだろ」
「…いや、言わないよ」
サンダルフォンの声は真剣みを帯びる。
「天司長でも後継でもない、俺を見たにはルシフェル様と君だけだった。だから俺は俺だという考えは好んでいる」
「なるほど…」
「何百年も前、俺はパンデモニウムで君に会ったとき、なぜかひどく安心した。あの時、俺の記憶にあった君の最後の顔は…全てを否定しているようだった」
「自分が根源なのに、よく言うな…」
照れ隠しのAの言葉もサンダルフォンは笑って受ける。
「…そうだな。俺を捕らえたのが君だったから俺はここにいる」
「ま、お前が叛乱なんて起こさなければパンデモニウムに行って怒られたあげく、監視者になることも虚無の力に気がつくこともなかったわけだ」
「そもそも、俺が叛乱を起こさなければ誰も死なず、ルシフェル様が解決していただろうな」
「けど、未熟者同士それなりにやれてると思う」
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年4月7日 14時