Episode53 ページ16
ルシオの言葉をもう一度頭の中で整理する。
「つまり、今の僕の力は僕自身が得たものであり、世界がそれを中心に勝手に回った、と?」
「そういうことだと考えていただいて構いません」
「…なら、僕がこんなんじゃなかったら、ルシフェル様は」
「死ななかったでしょう」
「なっ…」
ルシオの言葉にAの言葉から表情が抜け落ちる。しかしすぐにルシオはほほ笑む。
「しかし、サンダルフォンが戻ってくる事はなかったでしょう。あのまま囚われ続け、溝を生んだままルシフェルは生き続けたでしょう。貴方がいなければ、世界が終わってる可能性もあります」
「…お前、不器用な励ましだな。人間じゃない僕だってもう少しマシだぞ」
「…なかなか難しいものですね。人間とはおもしろいです」
「そんな預言者が、なぜ人間の真似事を?」
Aの質問にルシオは遠く続く空を眺めながら答える。
「私はこの世界の行く末をただ静観する事をやめました。私自身、一つの構成となってみたいと…役者になりたいと思ったのです」
「結局、預言者っていってもそんなもんか」
自嘲気味に笑ったAにルシオはにこやかに笑う。
「Aさん」
「ん…?」
「今話したことは、誰にも言わないでください」
「言わないさ。預言者がお前だなんて言ったらサンダルフォンに殺されそうだ」
「…フフ、それならばよかったです」
穏やかに笑ったルシオは一礼すると部屋から出ていく、部屋に残されたAは空を眺める。
(特異点である僕と団長が出会う事自体がイレギュラー…ルシファーの計画を狂わせたベリアル、僕から記憶を消したミザ、僕を守っていたルシフェル様、そして流れの中で再開したサンダルフォン…なるほど、確かにあり得ないことではない。創世神…聞いてるなら答えろ。どうしてこうも美しくて残酷な世界を造ったんだ)
問いに答えはない。そして、問いであるという事は願いでもある。美しくも残酷なこの世界であってほしいという願い。
「あ、やべ…そろそろ喫茶室に戻るか」
喫茶室に戻るとすぐに軽食の準備を始める。先ほど届いたドラッヘントラウトを捌き、生地を用意していく。前日から用意していた菓子は切り分けておく。
「あとは…」
喫茶室内を見回し、足りないところを探す。一通り終える頃にはキッシュは焼けていた。
「うん、いい具合だ。あとはポテトタルトか」
あらかじめ焼き上げておいた生地にポテトを詰め込んでいく。
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年4月7日 14時