Episode65 ページ28
天司の一団は街中を散策する。食べ物や装飾品、大道芸など様々なものを目にする。
「そういえばA、音楽家ってもうやめちゃったの？」
「ああ、やってないよ。船で少しやるぐらいだ」
「なあA！僕達にも聴かせてくれよ！下位天司は滅多に会うことも出来なかったから聴いたことがないんだ」
「私も賛成！聴かせて〜！」
ハールート、マールートにせがまれて苦笑いするA。
「こんな人の山でやるのか？」
「ここだからいいんじゃないか！」
「そこまでいいものかなぁ…」
「僕達のハープ、あるんだろう？」
「ああ、あるよ」
「ならやりましょう！私も聴きたいわ！」
「おいガブリエル！」
ガブリエルにもせがまれ、Aはジリジリと後ろへ追い込まれていく。そして足を更に一歩引いた瞬間何かにぶつかる。
「おい、周りをよく見ろ…」
「ごめん…」
サンダルフォンにぶつかったことを詫びるAだったが、ふといいことを思いつく。
「サンダルフォンも一緒だったらやってやるよ」
「本当かい！？」
「おい！俺を巻き込むな！」
「やりましょうよ！ほら、早く！」
「ミカエル、助けてくれ！」
「妾も聴きたい」
「あ、おい！！」
巻き込まれたサンダルフォンは、結局Aとともに広場の端まで連れていかれてあきらめる。
「…少しだぞ」
「やったー！」
「さすが、天司長様ね！」
「…」
不機嫌なサンダルフォンにAはヴァイオリンを差し出す。
「まあ、付き合えって」
「仕方ない。これで俺が逃げたと思われるのも嫌だしな」
「ひねだるふぉん、って言われるぞ」
「ぐ…」
ヴァイオリンの感触を確かめるサンダルフォン。その間にAは自分の楽器を顕現させようとする。
「…何にしようかな」
「ハープじゃないのかい？
「ハープとヴァイオリンの組み合わせ…か」
少し考え込んだAだったが、サンダルフォンに耳打ちするとサンダルフォンの口元が緩む。
「よし、決まりだ」
目を合わせ、当時にうなずく。それを合図に演奏は始まる。暖かい陽気な風のようなメロディーが響き渡る。
「…あれ！？」
何かに気が付いたハールートが声を上げる。視線をたどると、そこにいたのはリランとルークだった。
「…なっか普通に演奏してますね」
「ふふ、いいじゃない、大勢のが」
「俺も何か始めようかなぁ…」
「ウリエルは楽器の前に常識を学ぶべきだ」
「…あ！？」
「喧しい」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
