Episode51 ページ14
「Aさ〜ん、シェロさんからお魚が届きました〜！」
「ああ、ありがとう。そこに置いといてほしい」
「おい、A！今日お前、洗濯当番だぜ！」
「うわ、忘れてた！」
「あ、待ってください！手に泡立て器持ったままですよ！」
グランサイファーには再び平和が訪れる。久方ぶりにカフェを再開するための準備に追われるA。
「っと、ルリア！これ任せた！」
「はわっ！？」
泡立て器をルリアに投げるが、ルリアの手が弾いて船の外へと飛んでゆく。
「あっ！？」
とっさに船から乗り出そうとしたAの前に、人影が横切る。
「…はい、Aさん。先に置いて来てください」
「ルシフェ…じゃなかった、ルシオ、ありがとう」
にこやかにほほ笑むルシフェルに似た男、ルリオから泡立て器を受け取る。厨房に行き、片づけて戻ったころには洗濯は終わっていた。
「ごめん、やらせちゃったな」
「いえ、構いませんよ。私はこういうことは好きですから」
「…そうか」
意図せず顔が引きつる。
「…少し、話をしないかルシオ…いや、預言者」
「…わかりました」
Aの言葉にルシオの表情が変わる。Aの部屋へと招き入れ、珈琲を手渡す。
「ありがとうございます」
「…」
珈琲を飲むルシオの表情にAは目をキュッとつむる。息を吐いてから、ルシオに視線を戻す。
「それで、話とは？」
「どうして、人間の生活に干渉を？」
「私が、預言者、というのは？」
「質問を質問で…まあいいさ。根拠は二つ…お前は明らかに気配が違う。創成期以来の…異様な気配だ」
「もう一つは？」
「夢だ。僕は時々夢を見る。エテメンアンキもパンデモニウムも能力も何もかも既視感があった。そして、お前も…ルシファーを生み出したのはお前だろ」
「…」
しばらく黙るルシオ。その間Aは何も言わず、自分の珈琲に口をつける。ルシオの第一声は笑顔だった。
「貴方は、やはり記憶をお持ちだったのですね」
「記憶…？いや、夢だからわからない」
「貴方が見た夢はルシファーが見ていたものと同質のもの、つまり私の記憶です。貴方の予想は全て当たっています」
「…つまり、お前は預言者であると」
「そうです。私は神の御心を伝える役割を担っています」
「…ヘレル・ベン・サハル…本当にそんな奴が…」
しばらく驚くAだったが、すぐに表情を戻す。
「なぜ…ルシファーのコアにいた。お前なら、倒せたのでは？」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
