Episode49 ページ12
幽世からの襲撃事件から数日後、Aはフェードラッヘにいた。
「A、この木材をあっちに運んでもらっていいか？」
「ああ、任せろ」
「こっち終わったら休憩にしようぜ！」
「おい駄犬、まだ終わらないだろう」
「ちぇ…」
一番の激戦となったフェードラッヘは復興が未だ続く。その中で人々は身分を問わず手を取り合い、そしてその中にAは混じる。
「でもさ、A」
「ん…」
「大丈夫なのか？目を覚ましてすぐなんだろ？」
「寝すぎて体がなまりそうだ」
「Aの力、めちゃくちゃ強かったなー」
「あれは、普段から付与することはできないのか？」
「やってみるか？終わった後、倦怠感に襲われるぞ」
「え、遠慮します…」
「A様、こちらはどうしましょうか」
「ああ、それは…って」
突然現れたリランに驚く。リランの手には道具が握られる。
「お前達はもう自由にしろって…」
「自由に過ごしていますよ。貴方についていく、という自由を」
「はぁ…ルークみたいに好きに生きればいいのに」
「ルークなら、あそこにいますよ」
「は…？」
視線の先には下位天司を操り、人々に支援物資を供給するルーク。その顔には笑顔さえ見える。
「…まったく、自由を知らなさすぎないか？」
「まあ、そうかもしれないですしね。アズラエル様も船で働いてらっしゃいますし」
「んな…あいつ、大丈夫なのかよ…またおはぎか？」
「今日はおはぎパーティーだと聞いてます」
「ま、そうだわな…リラン、この木をあそこの職人にもってけ」
「わかりました」
こうして復興は着々と進んでいく。天司は今一度、ただの命として戻る。その背に羽はなくとも、天司としての誇りを胸に過ごす。何かあれば人間と手を取り、助け合う。
「…ルーク！下位天司を使うのはよくないぞ！」
「あんなも人間の力じゃ無理なことしてるでしょ？」
「こ、これは…」
「やめろよ二人とも…何かを助けるためなら力は惜しげもあく使えよ。できるベストを尽くすのが、心ってもんだ」
「ほら」
「ほ、ほらって…」
「ま、おいおいわかるさ、グリームニルやシヴァにも似たような時期があった」
「そうなんですか…」
「おーい、Aー！飯食うぞー！」
突然呼ばれ、声のした方に向くとヴェインが手を振る。
「…行こうか」
「はい！」
「わかった」
ヴェインの元へ歩き出す三人。その背後の町並みは着々と戻りつつあるのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
