Episode30 ページ31
数え切れないほどの時が過ぎ、珈琲の実を収穫し、花が咲き、また実がなるのを何度も繰り返したころ、異様な気配をAは感じていた。
「…何か、変だ」
「どうした、A。つまみ食いはほどほどにしろと…」
「サンダルフォン、おかしくないか…？」
「…何がだ」
「ルシフェル様の反応が…消えた」
「そんなことあるわけないだろう。感知能力が鈍っているのでは？」
「なら、お前は感じるのかよ！」
「もともと俺は感知はできない。この空間の中ではお前の気配しかわからないよ」
「…そうか」
嫌な予感がし、空間の先を見つめる。ふと、珈琲を差し出される。突然の行動に戸惑いを隠しきれずにいた。
「出て行ってもいいぞ。俺のことは気にせずにね」
「いや…」
「君が言っていたんだろう。ルシフェルの補佐官としても代替機能を持っていると。なら、行くべきは君だろう？」
「…サンダルフォン」
Aは今にも泣きそうな顔でサンダルフォンを見つめた。珈琲のぬくもりが徐々に失われていく。
「…三人で珈琲を飲むんだろう？」
「…！」
「ルシフェルはいらないのなら、別だが…もしかして俺の勘違いか？」
サンダルフォンの言葉に、気づかされ、珈琲を一気に飲み干す。
「っはぁ！ご馳走様。…必ず会いに来る。ありがとう、サンダルフォン」
「どういたしまして」
空間に向かい、走る。羽を顕現し、ありったけの力で顕現を願う。すると、体が光に包まれ、目を開けた時に見たことのある景色へと変わっていた。
「…ここは、カナン。…！？ルシフェル様！」
慌てて走ると、瀕死のルシフェルと、黒い武器を持った男が立っていた。
「っ！ルシフェル様！！」
「A…なぜ、君がここに」
「なんで…なんで蘇生ができない…」
「…！A、後ろだ…！」
「…え？」
振り返ると、黒い武器を持った男に狙われており、よけきれずに目をつむる。だが、攻撃は当たらずにかわりにルシフェルが攻撃を食らっていた。
「―――――ッ！！ルシフェル様ぁッ！なぜ！！」
「君は…生きるんだ…いつかサンダルフォンの力が…必要…に…」
「しゃべらないでください…！」
「あれ〜、だれかと思えばAじゃないか」
「…！べリアル…！」
「これはいい、お楽しみのところを襲ったのかい？バブさん」
「ふん、黙ってろ」
「お前は、ルシファーのところに通ってた星の民…！」
「ルシフェルはもう終わりだ。神話は終わりをつげ、無に返す」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年3月3日 20時
