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どうも初めまして。信条 錦と言います。今春から花の高校生!彼女作ったり、部活に励んだり…する……のは普通の男子よりもハードルが少し高いかな?
なぜなら僕は「女装男子」だからだ。

茶髪をキュッと、ポニーテイルに結ぶ。スカートは少しだけ折って、カーディガンを着る。ジャケットを軽く着てバックを持って、リビングに向かって階段を駆け下りる。

トーストの焼けた音やニュースの音、香ばしい香りに、何より朝を感じさせるのは…

「がっこーだー!!!音楽の授業は来週からだーー!!!今週超ヒマーーー!!!!」
「そうだなぁ。今週は流石にヤンキーいないんじゃないか?」
「夏休みとか長期休暇に増えるんだよね〜。でもどーかなー?期待の新星はいないかな?」
「でもそろそろお前も喧嘩やめたらどうだよ、今年受験だろ?」

…上2人のやり取りだ。とにかく朝は叫びたがる長女。美味しそうな朝食を用意しながら相手をする長男。このシェアハウスには入居したばかりだが、もう精神的に追いやられている気がする…

長男がこちらに気がついたようで、「おはよう」と声をかけてきた。ぺこりと会釈をしてテーブルに座る。テーブルには牛乳とチョコトースト、ベーコン、トマトが用意されていた。長男はエプロンをとると向かい側に座って朝食を食べ始める。

「…三剣さん、喧嘩するんですか」

こそっと小さな声で問いかける。するとしたら少し怖い。

「あー、するよ。平気でするよあいつ。一方的に」
「一方的に!?」
「あいつは無傷なのに相手がボコボコって酷いよね〜」
「えっ、それただの虐めじゃないですか!?」

ケラケラと普通に言うが大丈夫なのだろうか、それ以上に…ただの虐殺だ。
そんな恐怖を僕が感じているとは知らず、隣に座ってトーストを頬張る長女。
こんな美人さんが喧嘩ってありえない。と思いながら食べていた。

「あっ、ところで君本当に男の子?可愛いよ。女の子だったら抱きたいくらい」
「突然そういうのやめてくれませぇん!?」
「まぁ、本当に可愛かったら男の子でも全然構わないんだけど」
「こっちはぜっんぜん!無理です!無理!!」

突然のナンパのようなものに驚いたが、それ以上に焦燥の危機を感じて身震いした。鳥肌がぞわぞわと立つ。



多分、全ての女装男子の天敵はこの長男だ。と感じるほどだった。

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作者名:そこらへんの緩和水溶液 | 作成日時:2017年5月17日 19時

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