あくまでも客室清掃員 (ページ5)

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エスクプスさんページ5

「はじめまして。セブンティーンの統括リーダーのエスクプスです」

そうにこやかに挨拶してくれたのは、私の中で顔と名前が一致する数少ないメンバーの一人、エスクプスさん。まさか対面するなんて思っていなかったので、驚いてしばらくエスクプスさんを見つめてしまった。

「おい、挨拶」

とマネージャーさんに肩を叩かれる。

「あっ、七瀬Aです。この春から新入社員として勤務させていただいております」

「そうじゃないだろ!?」

「えっ？私なにか間違ったこと言いましたか？」

「いや間違ってはないんだが、そうじゃなくて…」

ん？挨拶をしたつもりだったんだけど、なんかもっと別のことを言わなきゃいけなかった？え、誕生日とか血液型とか？

私が困惑したままマネージャーさんを見ていると、隣から控えめな笑い声が聞こえてくる。そちらをマネージャーさんと同時に見れば、にこにこして私たちを見ているエスクプスさんの姿が。

「あ、ごめんなさい。Aさんがこれから俺たちの宿の清掃をしてくれるんですよね？」

と微笑みながらエスクプスさんが言う。
マネージャーさんが「そうだよそれだよ、その紹介をするために呼んだんだぞ～」と私に言うので、ようやく先ほどの疑問が解けた。
私がするべき挨拶は清掃員の方だったのね。

改めてエスクプスさんによろしくお願いしますと挨拶をする。

「一応Aが働くことになった経緯はスンチョリには伝えてある。毎回同じ人に清掃に入られてるっていうのがストレスに感じるといけないから、メンバーには伝えずにスンチョリだけ把握してる」

「わ、分かりました」

"スンチョリ"ってエスクプスさんのことでいいの？
話の流れ的にそうなんだろうと思いつつ返事をすると、またエスクプスさんが笑って私を見ている。

「"スンチョル"。俺の本名です」

まるで私の頭の中が見えているかのように私が気になっていたことに答えてくれる。

「あ、すみません…！」

なんでわかったの？エスパーなの？
そう思いつつ、未だにメンバーの芸名と本名、そして顔も覚えられていないことの申し訳なさと、そのことに気づかれてしまった恥ずかしさで頭を下げる。

「Aさんって面白いですね」

唐突にそんなことを言われてさっき下げた頭が三秒もたたずに上がる。

え、なに、どこに面白要素があったの？
しかもとても優しい顔でこちらを見てくるから余計に困惑してしまう。