友達 ページ12
「と、ともだち…？」
「うん」
てっきり、雑用を押し付けられたり日頃の清掃の仕方の文句を言われるのかと思っていたら、全く予想もしていなかったことだった。
「いや、無理です…」
「え、どうして？」
断られるとは思っていなかったのか、ジョシュアさんが目をぱちくりとさせて聞いてくる。
「どうしても何も、メンバーの皆さんとはプライベートでの接触を禁止されているので」
「ばれなきゃ大丈夫だよ」
さらっとやばいこと言ってると思うのは私だけだろうか。
「そういう問題では…。そもそもなんで私と友達になりたいんですか？」
「せっかく出会えたんだし仲良くしたいって思うの普通じゃない？」
「あ…、それはありがたいことなんですけど、事務所とかでも関われるので別に友達じゃなくても、」
「わかった」
私の言葉を遮るジョシュアさんの溜息交じりの声。
諦めてくれたのだろうか。
「本当はこんなこと言いたくなかったけど、僕と個人的な繋がりがあるってマネヒョンにばらされたくなかったら友達になって？」
諦めるどころか、にこりと笑って強硬手段に出てきた。
友達になりたいからと言って脅す必要が果たしてあるのか。
でもばらされるのはとても困る。もしかしたら時間の問題かもしれないが、今日解雇されて無職なんて流石に避けたい。
こんなに優しそうで紳士な見た目をしているのに、アイドルらしからぬ発言ばかりの彼が信じられなくなりそうだ。
「…はい、よろしく、お願いします」
「うん、よろしく」
満足そうに微笑んで差し出してきたジョシュアさんの手を恐る恐る握って握手する。
「あらためて、ジョシュアです。友達だし、仕事以外では本名の"ジス"で呼んでほしいな」
「ジスさん…。分かりました」
「Aちゃん」
「はい」
「えっと……、あー…」
何か言いにくいことなのだろうかと首を傾げてジョシュアさん、もといジスさんの言葉を待つ。
「実はね、その、あんまり女の子の友達いたことないから何話したらいいのかなって…」
照れたように頬をかく彼が、先ほど私を脅してきた人と同一人物なのか疑うほど純粋で、少し可愛いとすら思ってしまった。
「そう言われましても…」
友達になりたいと言われたから、何かしら聞きたいことや聞いてほしいことがあるんだと思っていたんだけど。
特にないんかい。
そう心の中で突っ込んでいると。
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作者名：曄雨 | 作成日時：2019年11月26日 4時
