大雨、後、虹 ページ12
本日の天気も雨
今日の彼女は、お店には入ってこなかった
何時かのように
傘を差して、軒下に立っている
店を出て、彼女の隣に行くと
やっぱり、何時かのように儚い笑顔で笑っていた
その右手にはあの時渡した、青い折り畳み傘
「覚えていますか?」
「……はい、勿論」
「あの時、返せなかったものを返しに、今日は来たんです」
「………………」
「本当は、いつも持っていたんです。折り畳み傘」
「………………」
「だけど…………どうしても返せなかった」
「………………」
「また明日、また今度、次の雨の日に、後少し、もう少しって、ずっと……」
「Aさん……」
「でも、もう返せます。もう…………私は、大丈夫」
「そうですか…………じゃあ、もうここには来てくれないんですか?」
「………………」
雨音が、弱まっていく
「私は……………………」
「………………」
弱まった雨が、ついに、止んでしまった
雲が晴れて、太陽が顔を出す
道路や街路樹に落ちた雨粒が、きらきらと反射する
もう、彼女に会えないのだろうか
・
・
・
・
「…………雨、止みませんね」
「……大丈夫、雨が止んだら、虹が綺麗ですから」
「…………はい」
やっぱり彼女は、笑っていた
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ケト。 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年6月17日 17時