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牛沢くんと、その友達の視線が一気に私に集まる。
とっさに出た言葉に自分でもびっくりした。
でももっとびっくりしたのは、
「先生が呼んでた……よ」
という私の虚言。
名前呼んじゃったからには何か言わないといけなくて、でも"話したい"はなんか恥ずかしくて。
牛沢くんが私の嘘を嘘だと疑うはずもなく、「おう」と言うとすぐに先生のもとに歩いていく。
どうしよう、このままじゃ……
「てか先生どこにいる?」
いきなり振り返ってそう聞く牛沢くん。
たしかに私に聞いてるはずだ。
「うそ」
「……ん?」
「先生が呼んでるの、嘘」
「嘘?……って、何のために?」
「……ほら、こっち」
「えっ」
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「げっ、うっしーBBQでもコーヒーなん!?」
「うるせ〜、オレンジジュースでも飲んでろお子ちゃま」
「うっしーコーヒー飲めるだけで大人ぶっててずるいわ〜」
「だけって言うなら飲めよ、おら、おらよ」
そう言いながらブラックコーヒーの入った紙コップを押し付けると、「ごめん」と「無理」を連呼するレトルト。ださ。おもろ。
コーヒー飲めるってそんなに珍しいか。
並んでいたのはコーラ、カルピス、オレンジジュースとかの甘いのばかり。
緑茶や麦茶ももちろんあったけど、全く減っていないアイスコーヒーがなんだか寂しそうに見えた俺は、二つの紙コップにそれぞれ緑茶とコーヒーを注いだ。
「あれやろ!うっしー、湊川さんがきっかけやろ!どーせ!」
「何がだよ」
「コーヒーもらってたやん!」
「あーなんかそんなんあったな」
「あの時ほんまは俺がかっこよく受け取るつもりやったんやけどな〜」
「なに、受け取った俺がかっこいいって?あざーす」
「もぉー!ちがうって!」
こうやってしょうもないことで笑ってるのがやっぱり一番面白いし楽しい。
俺はキヨみたいに人脈広くないし、いつも同じ奴らと過ごすけど、別にそれでいいんだよな。
友達なんて多くても結局居心地良いメンツで落ち着くわけだし。
「牛沢くん」
男臭い空間に、突然女の子の高いつぶやき声が響き渡った。
しかも俺の名前を呼んでる。
ついさっき名前が出たばかりの人物が現れたことに驚いたのか、レトルトがちらりと俺の方を見てきた。
「先生が呼んでた……よ」
「おう」
何だそんなことか、めんどくせ、と思いながらも担任のところに歩き出す。
でもあれ、先生どこにいるか分かんねぇや。
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ゃゅ(プロフ) - いちご丸さん» ありがとうございますめっちゃ嬉しいです!頑張ります!(^-^) (9月15日 1時) (レス) id: fbf309b419 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - めっちゃ好きです!頑張ってください (9月14日 21時) (レス) @page1 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゃゅ | 作成日時:2023年8月30日 0時