12.不意打ち ページ12
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『俺、気まぐれだから、歌いたいときにここに来て歌ってるよ』
でも、と笑って、
『いつもは夕方ぐらいにあがってるんだけどー』
空を見上げて、もーすっかり夜だよ、と笑った。
「また、聴きに来てもいいですか?」
すると、えっと驚いたような目をしてわたしを見る。
子犬のような、綺麗で、色素が薄めの瞳。
さっきよりも近くで目が合ったから、
長いまつげも、きれいな二重幅もよく見える。
男の人が警戒心を感じさせなかったからか、
いつの間にか前でしゃがんでいた。
もちろん次は見えないように。
『聴きに来てくれるの?』
「はい」
『俺がいなくてもガッカリなんてしないでね?』
「はい?」
『だって、いると思っていなかったら無駄足踏んだってことになるし』
確かにそう、なる。
それに、きっと。もしいなかったら、
ガッカリしているわたしが目に見えている。
この人にも見えているみたい。
「駅で聴こえなかったらいないってことですよね?」
『わかんないよ?もしかしたら水とか飲んでるかもしんない』
「そんな長く飲みませんよね?」
『子どもと話してるかもしんないし』
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Mare(プロフ) - とても心に残るようなお話で、とても面白かったです。更新停止されている様ですが、続きが気になってしまい、感想を書かせていただきました。無理なさらず、がんばってください! (2018年8月25日 23時) (レス) id: 4b7fd3f8d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽ。 | 作成日時:2018年3月7日 18時